細い銀の糸みたいな雨の中 走りながら ――僕は 二海堂の棋譜を思い出していた 「迷い」「ためらい」「ひるみながら」も それでも「自分の今まで」を信じて「憧れの地」目指して 火の玉みたいに突き進む・・・ まるで一篇の 冒険小説のようだった
あの時の夕陽に照らされた あかりさんのほほや声が やきついて離れない ―初めて欲が出た しかも純粋な欲じゃない・・・・・・ それがいい事なのか 悪い事なのかも解らない ただ・・・ 今は勝ちたい どうしても 勝ちたい
ほんとはうすうす気づいてた いつも側を離れない花岡さん 美しく彩られた色のうすい弁当 いつもバッグの中に見えていたたくさんの薬 ほんとはずっと・・・ 訊けなかった・・・ 二海堂が訊かれるのを嫌がってた事ぐらい 子供の頃から解ってた・・・