貴様には目的を達するために悪を演じ、泥をかぶるという覚悟が足りぬ。誠の武士として大成したいのならば、土方、貴様は鬼に成れ!人から忌み嫌われ、全てを敵に回しても構わぬと、鬼になれるというのであれば、あるいは世の理をくつがえすことができるかもしれぬ。
女が死んで数年後、その女と同じ病にかかっていたことを知った。死病に侵されたことを嘆くのが普通なのだろうが、俺はなぜか嬉しかった。分かるか?あの女と同じ病で息絶えることができる、そう思ったのだ。我ながら女々しいことこの上ない。俺のような男があの女と同じ極楽へ行けるはずがないのにな。最初に惚れた女がああいう女だったからか、「誠」なるものというのは多くの泥をかぶりながらその下に根を張って生まれるものだという思い込みがあるのだ。泥の中で美しく花を咲かせる、蓮のようにな。