夢を、夢を見ていました。 夢の中のあの人は、怒りに我を忘れ、大切な人の名を叫び、物を 破壊し、雄叫びをあげていました。 私は思いました。 うらやましい、あなたにそこまで大切に想われているその人が、どうしようもなくうらやましかったのです。 できればあなたの大切なものが、私であればいいのに。 私であれば。
夢を、夢を見ていました。 夢の中いる人になった私は、力を求め続けています。 守りたい人がいるから。 守りたいものがあるから。 自分であることをつかみたいから。 だからこそ、その人は、強大な力に立ち向かって行くのです。
夢を、見ていました。 夢の中の私は、激しい痛みに必死に耐え続けていました。 絶え間なく襲いかかる苦痛。 逃げたい、逃げ出したい。 私はすぐにそう思いました。 しかし、その人の思いは違っていたのです。 その人は、少しも諦めてなんかいませんでした。 苦痛から逃げることも、戦うことも。 そして、生きることも。
行かないで、なんて言えません。 だってカズ君は、心の中でこう呟いていたから。 かなみ、もしおまえに何かあれば「駆け付ける」 世界中のどこからでも「お前を助けに行く」 カズ君が好き「わかってる、だが今は行く」 ああ、私はもう何も言えません。 でも涙はあふれてしまいます。 涙は流れてしまいます。
別に、別に目の前にいる人を恨んでいるわけじゃない。 違う出会い方なら、こうはなっていなかった。 でも、あの時出会ってしまった。 だから戻れない。 ただ上に行きたい。 白黒はっきりさせたい。 心に区切りをつけたい。 目の前にいる人は壁、相容れぬ存在。 ああ、すべては前に歩くために。 すべては前に進むために。