独裁者と言う名のカクテルをつくるには、たくさんのエッセンスが必要でね。独善的でもいいからゆるぎない信念と使命感、自己の正義を最大限に表現する能力、敵対者を自己の敵ではなく正義の敵とみなす主観の強さ、そういったものだが、あんたにもそのあたりは分かるだろう
ヤン・ウェンリーという青年は、なかなかうまいカクテルだが、独裁者になるための成分には欠けていると見る。むろん、知性や道徳性の問題じゃない。自己の無謬性に対する確信と権力への恋愛感情。この二つが彼には欠けている、と、これは私の偏見かもしれんが。