女が死んで数年後、その女と同じ病にかかっていたことを知った。死病に侵されたことを嘆くのが普通なのだろうが、俺はなぜか嬉しかった。分かるか?あの女と同じ病で息絶えることができる、そう思ったのだ。我ながら女々しいことこの上ない。俺のような男があの女と同じ極楽へ行けるはずがないのにな。最初に惚れた女がああいう女だったからか、「誠」なるものというのは多くの泥をかぶりながらその下に根を張って生まれるものだという思い込みがあるのだ。泥の中で美しく花を咲かせる、蓮のようにな。
その花の前では…どんな手練手管も愛し方も愛され方も忘れ去ってしまう そんな…ままならぬ花を女は心に一輪咲かせて生きておるのじゃ 確かにそれは永遠に咲く花ではないのかもしれん 簡単に色あせて枯れてゆく花なのかもしれん だが、何度枯れようとも季節が巡ればまた咲くのが花でありんす